手取りが増えない40代・50代へ|iDeCoとふるさと納税
昇給した。なのに、手取りはほとんど変わっていない。
「役職つけるから」と言われた日、うれしかった。でも明細を見たら、増えた分は社会保険料と税金で消えていた。30代、独立する少し前の話です。
あのとき感じた「行き着いた場所がこれか」という気持ち、20年、30年と働いてきた方なら、もっと強く覚えがあるかもしれません。
国や会社に言ったところで、来月の口座は1円も増えません。ここは、もう諦めたほうが早い。
ただ、同じ額面なのに、手取りが違う人がいるのも事実です。差をつけているのは頑張りでも役職でもなく、制度を使っているかどうかだけ。
しかもその制度、2026年12月に大きく広がる予定です。この記事では、40代・50代の今からでも間に合う「手取りの守り方」を、金額の目安つきで整理します。
なぜ昇給したのに、手取りは増えないのか?

「今年は上がったぞ」と思ったのに、翌月の明細を見て拍子抜けした経験、ありませんか。
この章では、その正体が気のせいではなく仕組みの問題だということを、明細のどこを見れば確認できるかまで含めて整理します。
ここが分かると、次の章から始まる「では何なら動かせるのか」という話が、自分の数字として読めるようになります。
額面が上がっても、そこから引かれる所得税・住民税・社会保険料が同時に増えるため、手取りの増え方は額面の増え方より小さくなります。
さらに物価が上がっていれば、実際に買えるものの量は昇給前より減ることさえあります。「昇給したのに楽にならない」という感覚は、気のせいではありません。
給与明細のどこを見れば、答えが書いてあるのか
給与明細は、大きく3つのブロックでできています。
| 欄 | 何が書いてあるか |
|---|---|
| 支給 | 基本給、残業代、各種手当。この合計が「額面」 |
| 控除 | 所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料 |
| 差引支給額 | 額面から控除を引いた残り。これが口座に振り込まれる「手取り」 |
昇給で増えるのは、いちばん上の「支給」欄です。
ところが、控除欄に並んでいるものの多くは、額面に連動して決まります。額面が上がれば、そこから引かれる額も一緒に上がる。だから、増えた分がまるごと手取りになることはありません。
じゃあ頑張って昇給しても、意味ないってこと?

意味はあります。ただ「増えた額=手取りの増加」ではないだけです。
去年の明細と今年の明細を並べて、控除欄だけを見比べてみてください。額面の差より、控除の差のほうが目立つ年があります。
今日できること:直近の明細と、去年の同じ月の明細を並べる。見るのは「支給合計」と「控除合計」の2つだけ。
物価を加味すると、「実質の手取り」はどうなるか
もう1つ、明細には書かれていない目減りがあります。
手取りの金額が去年と同じでも、物価が上がっていれば、同じ金額で買えるものは減ります。数字の上では減っていないのに、生活の実感としては苦しくなる。この差が、明細をいくら眺めても納得できない理由です。
現金は「安全な置き場所」だと思われがちですが、物価が上がっている局面では、持っているだけで買える量が減っていきます。額面が減らないので気づきにくいだけで、これも実質的な目減りです。
つまり、手取りを守るというのは「明細の数字を増やすこと」だけを指しません。引かれる額を減らすことと、残ったお金の価値を保つこと。この2つが揃って、はじめて守れたことになります。
- 昇給しても手取りが増えにくいのは、控除が額面に連動して増えるから
- 明細で見るのは「支給合計」と「控除合計」の2つ
- 物価が上がっていれば、同じ手取りでも実質は目減りしている
国や会社に期待するのをやめると、何が残るのか?

前の章で、手取りが増えない理由は仕組みの側にあると分かりました。では、その仕組みに腹を立て続けるとどうなるか。
この章はそこを整理します。短い章ですが、ここを通らないと次からの制度の話が「他人事の知識」で終わってしまいます。
先に結論を書きます。給与の額も税率も、個人には動かせません。動かせるのは制度を使うかどうかだけです。
この線を引くと、怒りに使っていた時間とエネルギーを、実際に口座の数字が変わる行動へ回せるようになります。
動かせないものと、動かせるもの
分けてみると、意外にはっきりしています。
| 動かせないもの | 動かせるもの |
|---|---|
| 給与の額面 | 課税の対象になる金額(申請すれば減らせる仕組みがある) |
| 税率そのもの | 同じ税金を、返ってくる形で納める選択 |
| 物価 | 手元に残ったお金の置き場所 |
左側をどれだけ嘆いても、来月の口座は変わりません。この記事で扱うのは右側だけです。
なお、この記事では政治や制度の是非は扱いません。扱うのは「今ある制度を使うと、自分の手取りがいくら変わるか」だけです。
制度は、申請した人にだけ適用される
ここがいちばん大事なところです。
右側の「動かせるもの」は、黙っていても適用されません。会社が代わりに手続きしてくれるわけでもなければ、税務署が「あなたはこれを使えますよ」と教えてくれるわけでもない。自分で申請した人にだけ適用されます。
つまり、同じ額面の2人に差がついているとき、片方が得をしているのではありません。もう片方が、知らないまま払い続けているだけです。
それって、知らない人が損する仕組みってことですよね?

はい。でも裏を返せば、知った時点で誰でも使えます。
腹が立つのは、ここまでで十分です。次の章から、実際にいくら変わるのかを見ていきます。
iDeCoで手取りはいくら変わるのか?(2026年8月時点)

ここからが、この記事の背骨です。名前は聞いたことがあっても「老後の年金を自分で積む制度でしょ」で止まっている人が多い制度ですが、40代・50代にとっての本当の価値は、老後よりも今年の税金が軽くなることのほうにあります。
この章では、その軽くなる額を条件つきの数字で確認します。
iDeCoの掛金は、全額が所得控除(税金を計算する対象から差し引いてもらえる仕組み)の対象になります。50歳・年収500万円・企業年金なしの会社員が現行の上限まで拠出した場合、年間の軽減額は約55,200円、10年で552,000円という計算になります。
ただしこの金額は条件によって変わるので、そこも含めて順に見ていきます。
「掛金が全額所得控除」とは、どういう意味か
給与から税金が決まるまでには、順番があります。
- 額面の年収
- そこから各種の控除を差し引く
- 残った金額=課税所得(税金の計算対象になる金額)
- 課税所得に税率をかける
- 税額が決まる
iDeCoの掛金が効くのは、2番目の段階です。
拠出した掛金は、その全額がここで差し引かれます。つまり、税金の計算対象そのものが、掛けた分だけ小さくなるということです。
ここで大事なのは、掛金は消えていないという点です。生命保険料や医療費と違い、iDeCoの掛金は自分名義の口座に積み上がっていきます。お金の置き場所を「給与口座」から「iDeCo口座」へ移しただけで、資産としては手元に残ります。
払ったお金が減るわけじゃないのに、税金だけ安くなるんですか。

そうです。ただし60歳まで引き出せない、という条件つきです。
生命保険料控除のように「支払額の一部だけ」が対象になる制度と違って、iDeCoは掛金の全額が対象になります。ここが他の控除と決定的に違うところです。
実際に、いくら軽くなるのか
具体的な数字で見てみます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 前提 | 50歳・年収500万円・会社員・企業年金なし |
| 掛金 | 月2.3万円(年27.6万円)=現行の上限 |
| 適用税率 | 所得税10% + 住民税10% = 合計20% |
| 年間の軽減額 | 55,200円 |
| 10年間の合計 | 552,000円 |
年27.6万円を拠出すると、その20%にあたる55,200円が、その年の税額から軽くなる計算になります。
この55,200円は、投資でいくら儲かったかとは関係ありません。掛金を出して申告した時点で、税の計算対象が減ることによって生まれる差額です。
この金額は、人によって変わります
ここは必ず押さえてください。
上の55,200円は、あくまで「50歳・年収500万円・企業年金なし・上限まで拠出・合計税率20%」という条件のときの試算です。
変わる要素は3つあります。
- 年収(適用される所得税率が変わります)
- 扶養している家族の人数
- 他に使っている控除(住宅ローン控除、医療費控除、生命保険料控除など)
掛金を上限より少なくすれば、軽減額もその分小さくなります。
「iDeCoをやれば年5万円戻ってくる」と覚えないでください。戻る額は人によって違います。自分の場合の金額は、iDeCo公式サイトの試算ツールか、証券会社のシミュレーターで確認してください。年収と家族構成を入れるだけで、その場で出ます。
運用がうまくいくかどうかとは、別の話です
iDeCoは、積み立てたお金で投資信託などを運用する制度です。だから当然、運用の成績によって将来の受取額は増えることも減ることもあります。元本が保証されている制度ではありません。
ただし、この章で説明した所得控除の効果は、運用の成績とは切り離されています。相場が上がっても下がっても、掛金を出して申告すれば、その年の税金の計算対象は減ります。
- iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象。税金の計算対象そのものが減る
- 掛金は消えるのではなく、自分名義の口座に移るだけ(ただし原則60歳まで引き出せない)
- 50歳・年収500万円・上限拠出・税率20%なら、年間の軽減額は55,200円
- この金額は年収・扶養・他の控除で変わる。自分の数字は試算ツールで確認する
- 運用の成績とは別の話。iDeCoは元本保証ではない
2026年12月のiDeCo改正で、何が変わるのか?

ここまで読んで「制度としては分かったけど、自分の年齢だともう遅いのでは」と思った方へ。その前提が、制度の側から崩れようとしています。
この章では、2026年12月に施行が予定されている改正の中身を確認します。40代・50代にとっては、積める額と積める期間が同時に広がる改正です。
変わるのは主に4つです。加入できる年齢の上限が65歳未満から70歳未満へ延び、企業年金がない会社員の拠出上限が月2.3万円から月最大62,000円へ引き上げられます。
あわせて、これまで50代後半で加入した人を悩ませていた資金の拘束が緩み、加入手続きも会社の書類なしで完結するようになる予定です。
変わる4つのこと
以下は2026年12月に施行が予定されている内容です。この記事は2026年8月時点で書いています。実際に手続きをする時点で、必ず最新の内容をご確認ください。
具体的に何がどう変わるのか、現行と並べて見てみます。
| 項目 | 現行 | 2026年12月〜(予定) |
|---|---|---|
| 加入できる年齢 | 65歳未満 | 70歳未満(69歳11ヶ月まで) |
| 拠出の上限(企業年金なしの会社員) | 月2.3万円(年27.6万円) | 月最大62,000円(年74.4万円) |
| 資金の拘束 | 50代後半で加入すると、受給開始が61〜65歳へ後ろ倒しになる | 70歳まで積み立てられるため、定年や退職金の受け取りに合わせた出口設計が立てやすくなる |
| 加入の手続き | 勤務先が書く「事業主の証明書」が必要 | 原則廃止。スマホやパソコンで完結 |
拠出の上限は、月2.3万円から月最大62,000円へ。額でいうと約2.7倍です。
40代・50代にとって、何がいちばん大きいのか
数字のインパクトが強いのは上限額のほうですが、実際に効くのは「積める期間が伸びること」です。
これまでiDeCoが40代・50代に勧めにくかった理由は、はっきりしていました。加入できるのが65歳未満まで。しかも50代後半から始めると、受け取り開始が61歳から65歳へ後ろ倒しになる。
積める期間が短いのに、お金は長く拘束される。この組み合わせが、始める判断を難しくしていました。
改正後は、この前提が変わります。
「もう歳だから今さら遅い」という理由は、2026年12月以降、制度の側から成立しなくなります。遅いかどうかは年齢ではなく、いつ手続きするかで決まる話になります。
もう1つ、地味ですが実務では大きいのが、4つ目の手続きの簡素化です。
これまでは加入するたびに勤務先へ「事業主の証明書」を書いてもらう必要がありました。総務に依頼しなければならず、これが心理的なハードルになって手続きを先延ばしにした人は少なくありません。ここが原則廃止になり、スマホやパソコンだけで完結するようになります。
会社に言わなくても始められるようになるんですね。

はい。書類を頼む気まずさで止まっていた人には大きい変更です。
施行前の情報である点だけ、注意してください
この章の内容は、まだ施行されていません。
制度の改正は、細部の運用が後から示されることがあります。上限額をいくらにするか、いつから増額できるかといった実務の部分は、加入している金融機関の案内が出てから確定します。
- 2026年12月に、加入できる年齢が70歳未満まで延びる予定
- 企業年金がない会社員の拠出上限は、月2.3万円から月最大62,000円へ(約2.7倍)
- 効くのは上限額より「積める期間が伸びること」。年齢を理由に諦める前提が崩れる
- 事業主の証明書が原則廃止になり、会社に依頼せず手続きできるようになる
- いずれも施行前の情報。手続きの時点で最新を確認する
ふるさと納税は、2025〜2026年の改正で使えなくなったのか?

「ポイントが禁止されたらしい」「もう旨味がないと聞いた」。ここ1年でそんな話を耳にして、なんとなく手を止めた方も多いはずです。
この章では、実際に何が禁止されて何が残っているのかを整理します。読み終わるころには、今年どう動けば損をしないかが判断できる状態になります。
先に結論です。使えなくなってはいません。2025年10月に禁止されたのは「仲介サイトが寄付した人へ直接ポイントを付けること」であり、クレジットカード会社が決済額に応じて付ける通常のポイントは今も残っています。
ただし2026年10月からは返礼品そのもののルールが厳しくなる予定で、実質的な内容は下がる方向です。
そもそも、ふるさと納税は「節税」ではありません
ここを誤解したまま使っている人が、かなりいます。
ふるさと納税の本質は、税金が減ることではありません。税金の先払い(移転)です。
今年のうちに好きな自治体へ寄付をすると、自己負担の2,000円を除いた全額が、翌年の所得税と住民税から差し引かれます。つまり、来年払うはずだった税金を今年前払いして、納める先を自分で選んでいるだけです。
じゃあ、トータルで払う金額は変わらないんですか?

ほぼ変わりません。得になるのは、返礼品の分だけです。
だからこそ、返礼品に何を選ぶかが、この制度の損得のすべてになります。ここは後半で詳しく扱います。
2025年10月に、何が禁止されたのか
2025年10月1日から、仲介サイトが寄付した人へ独自のポイントを付与することが全面的に禁止されました。
- 楽天ふるさと納税での寄付額に応じたポイント上乗せ
- さとふるの独自ポイントの新規付与
- Amazonギフト券などの進呈
これらはすべて対象外になりました。
この改正で消えたのは「サイトを選ぶ基準」です。それまでは、どのサイトが何%還元するかを比べて選ぶのが普通でした。その比較軸そのものが無くなったため、還元率でサイトを選ぶ時代は終わりました。
では何を基準に選べばいいのか。これも後半で扱います。
2026年10月に、何が変わるのか(施行予定)
こちらはこれからの話です。2026年10月1日から、返礼品そのもののルールが厳しくなる予定です。
| 変わること | 内容 |
|---|---|
| 熟成肉・精米の産地 | 他県産の肉を地元で熟成させたもの、他県産の玄米を地元で精米したものが対象外に。その都道府県内で生産・収穫されたものだけに限定される |
| 加工品の証明義務 | 自治体内で生まれた付加価値が50%を超えていることを、書類で証明する義務が課される |
| 経費のルール | 送料、サイトの手数料、ワンストップ特例の事務手数料まで含めて計算し直される |
3つ目が、寄付する側にいちばん影響します。
経費の計算範囲が広がると、自治体は決められた枠に収めるために、返礼品の量や質を減らすか、必要な寄付額を上げるかのどちらかしか選べなくなります。人気の高い熟成肉やブランド米の一部は、受付が終了するか、同じ品物により多くの寄付が必要になります。
逆にいえば、選択肢が多く、寄付額もまだ割安なのは2026年9月30日までということになります。今年の枠を使うなら、9月末までに大半を動かしておくほうが有利です。
ただし、ここも施行前の情報である点は変わりません。
2026年10月の改正は、この記事を書いている2026年8月時点ではまだ施行されていません。実際の運用は、各自治体と各サイトの発表を確認してください。
それでも残っている、還元の取り方
禁止されたのは「仲介サイトが寄付額に応じて付けるポイント」です。決済に使うクレジットカードやQR決済が、決済額に対して付ける通常のポイントは対象外で、今も獲得できます。
具体的には、次のような取り方が残っています。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 楽天 | 「5と0のつく日」にエントリーしたうえで楽天カードで決済。寄付への上乗せは無くなったが、カードの通常決済ポイントとSPUは有効 |
| ふるなび | 「ふるなびマネー」を事前にチャージすると最大5%が上乗せ。チャージ自体をクレジットカードで払えばカード側の通常ポイント(1〜1.5%程度)も付き、合わせて実質6.5%以上 |
| d払い/Amazon Pay | ふるさとチョイスやふるなびで、毎週金・土曜にエントリー制のキャンペーンが実施されることがある |
寄付額が大きい人ほど、この差は効いてきます。
キャンペーンの条件・還元率・実施の有無は変わります。ここに書いた数字は2026年8月時点で確認できたものです。実際に寄付する時点で、必ず各サイトの案内をご確認ください。
返礼品の選び方で、家計に残るものが変わります
ここが、この制度でいちばん差がつくところです。
ふるさと納税と聞いて思い浮かぶのは、高級な肉やカニ、いくらといった、普段は買わないものではないでしょうか。実際、多くの人がそれを選んでいます。
ただ、贅沢品を選ぶと、その日は食卓が豪華になりますが、翌日以降の生活費は1円も変わりません。
一方で、必ず消費するものを選ぶとどうなるか。
| 選ぶもの | 家計への効果 |
|---|---|
| 高級肉、カニ、いくら | その日のごちそう。日常の支出は変わらない |
| 米、トイレットペーパー、ティッシュ、洗剤、オリーブオイル | 日常のスーパーやドラッグストアでの支出がそのまま浮く |
後者を選ぶと、本来なら財布から出ていくはずだった現金が、そのまま手元に残ります。手取りが増えたわけではないのに、使えるお金が実際に増える。同じ枠を使っているのに、家計に残るものがまるで違います。
でも、せっかくなら普段食べないものが欲しくなりませんか。

その気持ちは分かります。目的が手取りを守ることなら、後者です。
一括ではなく、定期便で受け取ってください
選ぶものが決まったら、次は受け取り方です。ここを間違えると、せっかく選んだ日用品が無駄になります。
一括で届くと、まず置き場所が破綻します。トイレットペーパーが100ロール単位で届く、米が20kg届く、冷凍の肉がまとめて届く。押し入れにも冷凍庫にも入りません。
さらに厄介なのが期限です。洗剤やシャンプー、化粧品のように使用推奨期限があるものは、使い切る前に品質が落ちていきます。日用品を選んだのに使い切れなければ、贅沢品を選んだのと変わりません。
対策は定期便です。
- 毎月または隔月に分けて届くので、置き場所が破綻しない(米5kgを12回、トイレットペーパーを隔月など)
- 使う分だけ届くので、使用期限を超えない
- 申し込みが1回で済むため、後述のワンストップ特例の申請も1回で済む
3つ目は地味ですが、実務でいちばん効きます。ふるさと納税は寄付先の数に制限がある制度なので、申し込みの回数を減らせること自体が価値になります。
選ぶ前にやっておくこと:1年間で消費する量をざっと書き出す。米は何kg、ティッシュは何箱、洗剤はどれくらい。この量を超えて頼まないと決めておくと、置き場所と期限の問題が同時に消えます。
共働き世帯は、枠が2倍になります
見落とされやすいのが、ここです。
夫婦それぞれが年収201万円以上ある共働き世帯の場合、どちらも独身と同じ枠を個別に持てます。世帯としての枠が1つあるのではなく、2人分あるということです。
世帯全体で見ると、年間10万円以上のキャッシュフロー改善につながる場合があります。
ただし、2人分の枠を使う場合は、それぞれの名義で別々に手続きする必要があります。名義の扱いを間違えると控除が受けられなくなるので、ここは慎重に進めてください。
サイトは、この4つの軸で選びます
還元率という基準が消えた今、何を見て選べばいいのか。判断材料は4つあります。
| 軸 | 見るポイント |
|---|---|
| 取扱自治体・返礼品の数 | 選択肢の広さ。ふるさとチョイス約1,800自治体、楽天約1,600、さとふる約1,400、ふるなび約1,100 |
| 配送スピード | さとふるは自社の配送網を持ち、発送が早く配送状況を追いやすい。年末ぎりぎりの寄付で効く |
| オンライン申請への対応 | マイナンバーカードとスマホで、複数の自治体をまとめて申請できるか。実務の負担がいちばん変わる |
| サイト限定品 | 同じ返礼品が、他より少ない寄付額で出ていることがある |
欲しいものが決まっているなら1つ目、手続きの手間を減らしたいなら3つ目を優先すると決めやすくなります。
- ふるさと納税は節税ではなく「税金の先払い」。得になるのは返礼品の分だけ
- 2025年10月に、仲介サイトの独自ポイント付与が全面禁止された
- 2026年10月に返礼品の基準が厳しくなる予定。動くなら9月末までが有利
- クレジットカードやQR決済の通常ポイントは今も有効
- 返礼品は贅沢品ではなく、必ず消費する生活必需品を定期便で
- 共働きなら枠は2人分
- サイトは還元率ではなく、取扱数・配送・オンライン申請・限定品の4軸で選ぶ
40代・50代の今から始めても、間に合うのか?

ここまで読んで、まだ引っかかっているものがあるとすれば「それでも今からでは遅いのでは」という感覚だと思います。この章では、その感覚が正しいのかどうかを、制度の側の時間軸だけで確認します。気持ちの問題ではなく、年数の問題として見ていきます。
結論から言えば、間に合います。iDeCoは2026年12月の改正で70歳未満まで加入できるようになる予定なので、45歳なら25年、55歳でも15年の積立期間を確保できます。
ふるさと納税は年単位の制度なので、その年の12月31日までに寄付すれば、その年の分として使えます。
iDeCo:「残り期間が短い」という理由が成立しなくなります
これまでiDeCoを40代・50代に勧めにくかった最大の理由が、期間でした。65歳未満までしか加入できないため、55歳から始めると10年しか積めない。しかも50代後半からだと受け取り開始が後ろ倒しになる。
改正後は、こうなります。
| 始める年齢 | 70歳までの積立期間 |
|---|---|
| 45歳 | 25年 |
| 50歳 | 20年 |
| 55歳 | 15年 |
15年でも20年でも、長期の積立として十分に成立する年数です。
そして忘れてはいけないのが、前の章で見た所得控除の効果です。あれは運用の期間とは関係なく、掛金を出したその年から効きます。積立期間が15年でも25年でも、1年目の税の軽減は同じように発生します。
期間が短いと、控除のメリットも小さくなるんじゃ?

いいえ。控除は毎年発生します。短いのは積み上がる年数だけです。
ふるさと納税:使わなかった年の枠は、消えます
こちらは逆に、急ぐ理由がはっきりしています。
ふるさと納税の枠は1年ごとにリセットされます。今年使わなかった枠を来年に繰り越すことはできません。使わなければ、そのまま消えるだけです。
つまり、iDeCoが「早く始めるほど有利」なのに対して、ふるさと納税は今年やらなかった年は、今年の分が丸ごと失われる制度です。
しかも今年は、2026年10月に返礼品の基準が厳しくなる予定があります。動く理由は例年より強いといえます。
ただし、節税だけを目的にしないでください
最後に、但し書きを1つ置きます。
制度に詳しくなってくると、税金を1円でも減らすことが目的になっていきます。控除をどう組み合わせるか、どの順番で受け取るかを考え込んで、身動きが取れなくなる人がいます。
ですが、税金の最小化と、手元に残る総額の最大化は、別のものです。
たとえば受け取り方を工夫して税金を数万円減らせたとしても、そのために資金を長く動かせなくしてしまえば、トータルでは損をすることがあります。逆に、税金を払ったうえで手元の現金を運用に回したほうが、最終的な残高が大きくなる場合もあります。
判断に迷ったときは「税金がいくら減るか」ではなく「10年後、20年後に手元にいくら残るか」で比べてください。前者だけを見ていると、金額の小さいほうを選んでしまうことがあります。
この視点を持っておくだけで、判断のブレは減らせます。
- iDeCoは改正後、45歳なら25年、55歳でも15年の積立期間が取れる(施行予定)
- 所得控除の効果は、積立期間の長さに関係なく1年目から発生する
- ふるさと納税の枠は毎年リセット。使わなかった年の分は消える
- 節税額の最小化ではなく、手元に残る総額で判断する
まとめと、次の一歩

ここまで長い記事を読んでいただきました。最後に全体を短く振り返って、今日この記事を閉じたあとに何をすればいいかを1つだけお伝えします。読んで終わりにしないための章です。
この記事で確認したのは、手取りが増えない理由は仕組みの側にあること、そしてその仕組みの中に自分で動かせる部分が2つあることでした。iDeCoと、ふるさと納税です。
この記事で分かったこと
- 昇給しても手取りが増えにくいのは、控除が額面に連動して増えるから。気のせいではない
- 動かせないもの(額面・税率・物価)と、動かせるもの(課税の対象額・納める先)は分けて考える
- iDeCoの掛金は全額が所得控除。50歳・年収500万円・上限拠出・税率20%なら年55,200円の軽減(条件つきの試算)
- 2026年12月の改正で、加入は70歳未満まで、上限は月最大62,000円へ(施行予定)
- ふるさと納税は節税ではなく税金の先払い。得になるのは返礼品の分だけなので、選ぶのは生活必需品の定期便
制度は、知っている人が得をしているのではありません。申請した人にだけ適用されるので、知らない人が払い続けている。それだけの話です。
今日やることは、1つだけです
情報を集めるのはここまでで十分です。ここから先は、実際に自分の数字を見ないと何も動きません。
- 直近の給与明細を出す
- 「控除」の欄を、金額まで含めて実際に見る
所要時間は5分です。ここを見ないまま制度の話をいくら読んでも、自分の数字にはなりません。
明細をしまい込んだままにせず、まずは開くところから始めてください。
ただし、両方やる人には注意点があります
最後に1つだけ、この記事では扱いきれなかった話をお伝えします。
ここまで、iDeCoとふるさと納税をそれぞれ別々に説明してきました。ですが実際には、この2つは互いに影響し合います。
具体的には、iDeCoの掛金を増やすと課税所得が下がるため、それに連動してふるさと納税で使える上限額も下がります。
上限を超えて寄付した分は控除されず、全額が自己負担になります。しかも超えたことは、その場では分かりません。
両方やろうと思ってたんですが、順番があるってことですか。

あります。そこだけは別にまとめました。
両方を使うなら、どちらを先に決めるか、上限からいくら引いておくか、いつ寄付するか。この順番を間違えると、せっかくの制度で損が出ます。
この記事で分かるのは「それぞれの制度が何で、いくら変わるか」までです。
3つを組み合わせるときの実行順と、上限額の調整のしかたは、こちらにまとめました。
年内の締切から逆算したチェックリストつきです。
