役職定年がつらい50代へ|定年のない生き方の作り方
「役職定年」の二文字が視界に入るたび、見なかったことにしてきた。まだ先の話だと思っていたのに、調べてみると2025年4月、国の補填(高年齢雇用継続給付)はもう縮小されていた。
しかも今の50代は全員、その新基準の側にいる。会社にいれば何とかなる、という前提が、気づかないうちに崩れている。
この記事では、60歳時点の手取りが実際いくらになるのかを数字で示したうえで、転職ではなく「会社の外に小さな足場を作る」という、まだ10年あるうちにできる準備を整理する。
役職定年・再雇用で、手取りは本当にいくら減るのか?

「役職定年」の四文字を見るだけで、心臓がざわつく人は多いはずです。
この章では、まず「なぜこの言葉がこれほど検索されているのか」を確認したうえで、60歳で再雇用になったとき、手取りが実際どれくらい変わるのかを、具体的な金額で見ていきます。
数字を先に知っておくだけで、漠然とした不安が「対処できるもの」に変わります。
役職定年が「つらい」と検索される理由
「役職定年 つらい」——このまま検索したことがある人は、思ったより多いはずです。
役職定年とは、一定の年齢(多くの会社で55歳前後)に達すると、部長や課長といった役職から外れる制度のこと。
給料が下がるだけでなく、部下がいなくなる、会議に呼ばれなくなる、名刺の肩書きが消える——そうした「静かな降格」が、本人にしか分からない痛みとして積み重なります。
役職定年って、給料が減るだけじゃないんですね……

はい。多くの人が本当につらいのは、給料より「扱われ方」の変化の方です。
制度としての役職定年の先に待っているのが、60歳以降の「再雇用」です。定年後、同じ会社で再び雇用される仕組みですが、ここでも給料の下がり方は他人事ではありません。
60歳再雇用後の手取り、実額シミュレーション
「役職定年 手取り15万」「再雇用 手取り20万」——これらも実際に検索されている言葉です。ここまで具体的な金額で検索するのは、既に自分の給与明細を見て、現実を突きつけられた人たちです。
よくあるケースとして、60歳時点で月給40万円だった人が、再雇用後は月24万円(約60%)まで下がる、というものがあります。
下がり幅は会社の制度・役職・業務内容によって大きく変わります。ここで挙げた数字は「よくあるケースの一例」であり、あなたの場合の正確な金額ではありません。ご自身の会社の再雇用規程・給与テーブルを確認してください。
額面が40%も下がるとなれば、「じゃあ国が何かしら補填してくれるのでは」と考えるのが自然です。実際、そうした制度(高年齢雇用継続給付)は存在します。ただし——ここに、今の50代が知っておくべき変化が起きています。次の章で、その中身を見ていきます。
国の補填も、2025年4月から静かに減っていた

前の章で見た「再雇用後の手取り減」には、実はこれまで国のクッションがありました。ところがそのクッション自体が、2025年4月にひっそりと薄くなっています。多くの人がまだ気づいていないこの変化を、ここで確認します。
支給率上限15%→10%縮小の中身
その制度は「高年齢雇用継続給付(こうねんれいこようけいぞくきゅうふ)」といいます。60歳以降、給料が下がった人に対して、雇用保険から給付金が支給される仕組みです。
この給付金の支給率の上限が、2025年4月1日に最大15%から10%へ縮小されました。
しかも対象になるのは、2025年4月1日以降に60歳になる人。2025年3月31日以前に60歳になっていた人は、これまで通り最大15%の旧基準が続きます。
つまり——
今50代の人は、これから60歳になるタイミングで、全員が新基準(最大10%)の側に入ります。「自分は関係ない」と思える50代は、実はもういません。
この縮小の背景には、企業に「65歳までの雇用確保措置」を義務づけた法律(高年齢者雇用安定法)があります。65歳までの雇用が企業側の義務として定着したことで、給付金で補う必要性が薄れた、という判断で経過措置が2025年3月末に終了しました。
月40万→再雇用後24万の場合、旧基準36,000円/月→新基準24,000円/月
数字で見ると、この差はもっとはっきりします。
前の章で挙げた「月給40万円→再雇用後24万円」のケースで、旧基準と新基準を比べてみます。
| 旧基準(〜2025年3月まで60歳) | 新基準(2025年4月以降60歳) | |
|---|---|---|
| 支給率上限 | 15% | 10% |
| 給付金(月) | 約36,000円 | 約24,000円 |
| 差額 | — | 月12,000円のマイナス |
1ヶ月1万2,000円って、地味に大きいですね……

年間だと約14万円です。しかも、この差は一生埋まりません。
「高年齢雇用継続給付」という言葉自体は、これまで通り検索すれば出てきます。ただし今出てくる情報の多くは「申請方法」や「いくらもらえるか」であり、この15%→10%への縮小そのものに触れていないものも少なくありません。制度が「ある」ことと「以前より薄くなった」ことは、別の話です。
出典:キヤノンMJ・三菱UFJ銀行の解説記事(2025年4月1日施行)
会社にいれば、この給付金だけでなんとかなる——そう思っていた前提が、ここで一段崩れます。では、この崩れた前提の先に何があるのか。次の章で、もう少し踏み込みます。
「会社にいれば何とかなる」という前提が崩れている

役職定年で給料が下がり、国の補填まで薄くなった——それでも「会社にいれば、なんだかんだ何とかなる」と思いたくなるのが人情です。
でも、その「何とかなる」が、実は一番危ういという指摘があります。この章では、その理由と、僕自身が会社の外に出て見えたことをお伝えします。
社外に選択肢がない人ほど、再雇用に依存してしまう構造
パーソル総合研究所は、こう指摘しています。
「社外に選択肢を持たない人材は、再雇用制度のみに依存することになり、モチベーションや生産性が低いまま社内に滞留する『ぶら下がり化』を招きかねない」
「ぶら下がり化」——つらい言葉ですが、構造はシンプルです。外に行き場がないと分かっている人ほど、今の場所に留まるしかなくなる。そしてその状態は、本人の意欲にも、待遇にも、いい影響を与えません。
同じ調査では、副業をしている人の割合が50代後半でいったん5.6%まで下がり、60代前半6.3%、60代後半7.6%と、定年後にまた増えていくことも分かっています。
50代のうちは「会社一本」に絞り、定年後になって初めて外の世界に目を向ける人が多い、ということです。順番が逆かもしれません。
これは、俗にいう「現状維持という名の緩やかな沈没」そのものです。何か大きな失敗をしたわけではないのに、ただ流されているだけで、気づいたときには選択肢が目減りしている。
34歳で独立し、36歳で倒産した僕から見た「会社の外」
僕は34歳のとき、自分の意志で会社を離れ、独立しました。その2年後、36歳で会社を倒産させています。
正直に言えば、僕は60歳の再雇用も、役職定年も、まだ経験していません。だからこの記事は、当事者としての体験談ではなく、「会社の外に出たことがある人間」から見た景色として読んでもらえたらと思います。
失敗したのに、それでも「外に出てよかった」って思うんですか?

倒産は正直きつかったです。でも「外に選択肢がある」という感覚は、あの経験で手に入りました。
会社の外に一度でも足を踏み入れると分かることがあります。それは、「外に何もないかもしれない」という恐怖の正体は、たいてい「試したことがない」という一点に尽きる、ということです。
次の章では、この「会社の外に選択肢を持つ」ために、50代が今日から具体的に何をすればいいのかを整理します。
50代が今からできる「定年のない足場」の作り方

ここまでで、会社にいるだけでは前提が崩れつつあることが分かりました。ではどうすればいいのか。結論から言うと、答えは「今すぐ転職する」ではありません。この章では、なぜ転職ではないのか、そして代わりに何をすればいいのかを、具体的に整理します。
なぜ「転職」ではなく「会社にいながらの準備」を勧めるのか
僕自身は、正直に言うと転職に抵抗がないタイプです。実際、環境を変えることに大きな不安を感じたことはあまりありません。
ただ、周りを見ていると話は別です。
特別なスキルを持たない人の転職、とくに40代以降の転職は、本当に厳しいのが現実です。雇ってくれる企業自体が、驚くほど少なくなります。
転職サイトを見ても、40代・50代向けの求人って少ない気がします……

はい。しかも「未経験可」はほぼ無くなります。武器がないまま外に出るのは、リスクが高いです。
だからこそ僕がすすめたいのは、「会社を辞めてから考える」のではなく、会社にいながら副業でスキルをつけ、それができてから独立や転職を考えるという順序です。今の給料という土台があるうちに、外で通用する武器を先に作っておく。これなら、いざというときに「選ぶ側」に回れます。
転職ではなく、会社の外で小さく稼ぐ実験を1つだけ始める
「スキルをつける」と聞くと、資格の勉強のようなものを想像するかもしれません。ですが、いきなり大きな一歩を踏み出す必要はありません。
- 得意な作業を1つだけ選び、クラウドソーシングで小さく請け負ってみる
- これまでの仕事の経験を、note やブログに1本だけ書き出してみる
- 家族や同僚以外の人に、自分の話を1回だけ発信してみる
大事なのは「稼げたかどうか」ではありません。会社の看板を外した状態で、自分の力が少しでも外に通用するかを試してみることそのものに価値があります。
準備期間はまだ10年ある、という順序の示し方
「もう50代だから遅い」と感じるかもしれませんが、ここは冷静に数えてみてください。
50歳なら、60歳まで10年あります。55歳でも5年です。副業でスキルをつけ、小さな実験を重ねるには、決して短い時間ではありません。
焦って会社を辞める必要はありません。焦るべきは、「準備そのものを始めていないこと」だけです。
次の一歩

ここまで、役職定年・再雇用の実額から、国の補填の縮小、そして今からできる準備までを見てきました。最後に、今日の内容を振り返って、次にやることを1つだけお伝えします。
- 役職定年・再雇用で、手取りは月40万→24万のように大きく下がるケースがある
- 国の補填(高年齢雇用継続給付)も、2025年4月から支給率上限が15%→10%へ縮小。今の50代は全員この新基準
- 「社外に選択肢がない」こと自体が、再雇用への依存(ぶら下がり化)を招く
- 対策は転職ではなく、会社にいながら副業で小さく試すこと
- 50歳なら準備期間はまだ10年ある
「もう遅い」のではなく、「まだ何もしていない」だけです。この2つは、似ているようでまったく違います。
今日、この記事を閉じたあとにやることは1つだけ。今の自分の経験の中から、「これなら小さく試せそうだ」と思えるものを1つだけ、紙に書き出してみてください。大きな決断はいりません。
「会社にいながら小さく試す」とは具体的に何から始めればいいのか。僕自身が「あと10年、今の会社で大丈夫」と思っていた頃の話も交えて、もう少し詳しくまとめました。
▶ 「あと10年、今の会社で大丈夫」と思っていた僕へ。60歳の崖を知った日
